宝塚時代は、トップスターとして、究極の男役を演じ女性を虜にし、絶大な人気を博していた宝塚のレジェンド、大和悠河さん。
女性だからこそ演じることができる大和悠河版タキシード仮面についてや、タキシード仮面への想いを伺いました。
多彩な役を演じてきたからこそできる
新たな世界へ
──初めてタキシード仮面の役の話を聞いた時、どのように思われましたか?
セーラームーンのミュージカルは、宝塚歌劇団を卒業後、男役としては初めて演じた舞台でした。男役は宝塚時代に演りきったので、2度と演ることなどないと思っていましたし、男役を宝塚卒業後も引きずることをしたくないと強く思っていました。しかし武内直子先生の原作のタキシード仮面の存在感、懐の深さ、かっこ良さなどがあまりにも素晴らしくて、これは、宝塚の男役を封印しようとしていたことが、かえっていらない私のつまらないこだわりのように感じ、素直に演じてみたいと思いました。
武内直子先生の世界は既に確立された絶対的な世界なので、その漫画の世界を舞台化するのにはかなり真剣に取り組む必要がある、私にとってとても幸せな時間になるだろうし、武内先生の世界観を表現することは、私の今まで宝塚の男役で培ってきた色々な見せ方、演じ方で、武内先生の根底の宇宙観をかならず表現できると思い、お引き受けしました。タキシード仮面(地場衛)は宝塚の男役の世界と共通の巨大な美学があり、新次元を象徴しているように感じ出演させていただきました。
また、女優として色々な役に出合ってきて、男役を完全に封印したからこそ宝塚時代とは異なる、今の大和悠河としての新しい世界を築き上げることができるのでは、という気持ちがムクムクと湧いてきたのです。
──役を演じてみて、タキシード仮面とはどんな存在だと感じましたか?
やっぱりセーラームーンの唯一無二の恋人であり、またセーラー戦士や地球のみんなを守る正義の味方、というイメージでしょうか。相手を想う力は、地球のように広く、誰よりも大きく、そして深い愛を持っている。さらにうさぎちゃんやセーラー戦士たち、また地球の人たちを命がけで絶対守る! という心意気があり、とてつもなく誠実で、とてつもなくピュアな人だと思います。
──タキシード仮面を演じる中で、最も感情移入されたセリフを教えてください。
ひとつは「邪悪な舞で可憐な少女を翻弄する輩は、このタキシード仮面が許さない!」という、タキシード仮面登場シーンのキメ台詞です。マントを翻し、赤バラを投げて参上! という現実世界ではちょっとありえないシーンですが、タキシード仮面だとビシッと決まる。快感でした。
もうひとつは、「いつか俺たちが消えてしまって、新しいセーラー戦士たちが次々に生まれても、セーラームーン、君は永遠に一番美しく輝く星だよ」というセリフです。「セーラームーン」の大エンディング、最終章はこのセリフで終わります。原作でも最後が衛のこの言葉なのですが、私もタキシード仮面・衛として存在した5年間の熱い想いをこのセリフに込めました。
──演じていて、ご自身でもこんなところが女子なら惚れてしまいそう! というシーンはありますか?
セーラームーンが絶対的なピンチの時には必ず、自分を信じろ! と、心の支えになってあげるところは女の子はキュンとなるのではないでしょうか。そしていつもセーラームーン(月野うさぎ)を背中から見守り、勇気づけているところですね。
女性だからこそ演じられた
究極の理想の男性像
──タキシード仮面と、地場衛の演じ分けで気をつけられたポイントはありますか?
ミュージカルでは、タキシード仮面、地場衛のほかにも地球の王子であるプリンス・エンディミオンや、キング・エンディミオンなど、同じ公演で、3役や4役を演じます。演じ分けるということではなく、その場面に応じたタキシード仮面=地場衛=エンディミオン役の在り方に、すっと気持ちが入っていく感覚でした。
あえて言うならば、タキシード仮面は、仮面の投げ方、薔薇の投げ方、マントの広げ方をタキシード仮面らしく爽やかに、キング・エンディミオンは素晴らしいラベンダーの衣装のマントを優雅に、プリンス・エンディミオンは甲冑のような衣装だったので、力強く、ということを意識しました。
また、タキシード仮面はときどき敵に翻弄されて悪者になる時があります。宝塚の男役の2番手がだいたいそうであるように、色気のある悪い男ってモテるんですよね(笑)。その場合は、とことん悪い男になりきって、女の子を虜にするようなちょっとキザで冷たい感じで演じ、地場衛は学生らしくアイドル性満開で、やんちゃな部分を意識しました。
──タキシード仮面を演じる中で、難しいと感じたところはどこですか?
武内直子先生の原作で描かれている、壮大で完成されている世界観の中での、完成しているタキシード仮面であり地場衛であるので、そのかっこよさはもちろん、見た目だけではなく懐の深さなど、常に原作の中のその存在を目指して演じてきました。
原作のタキシード仮面や地場衛は、結局は女性が求める、男性の完璧な理想像なんです。それは武内先生が女性だから描くことのできた世界なんですよね。そしてそれは私が女性だからわかるんです。だから、私はそれを演じることができる。女性だからこそ演じることができる世界なんですよね。
一途で真っ直ぐなタキシード仮面、地場衛。その理想像を常に追求し、進化させて演じつづけてきました。それは宝塚の男役も超越し、もちろん性別をも超え、究極の存在としてのタキシード仮面、地場衛なんです。
──大和さんにとってのタキシード仮面とはどういう存在でしょうか。
まず、「美少女戦士セーラームーン」という素晴らしい作品に出合えてうれしかったです。愛する心や、信じる心など、とってもピュアで、自分を犠牲にしても愛するものを守る、という強い心を持つタキシード仮面は海外でもすごい人気で、「CHICAGO」のロキシー役でNYリンカーンセンターで公演した際に、楽屋を出たら、「タキシード仮面に会いにきた」と海外のファンの方々がたくさん待っていてびっくりしました。アニメの世界という新たな次元の世界に出合えたタキシード仮面は、私の大切な財産のひとつですね。
今年の7月には、ハンブルク州立歌劇場・二期会の共同制作、ウェーバー作曲のオペラ「魔弾の射手」に出演。奇才ペーター・コンヴィチュニー氏の新演出のもと、悪魔ザミエルの役で、性別、さらには人間をも超越した世界に入ることができたという。今後もさらなる新境地を開拓し、新たな魅力を見せてくれるに違いない。
大和悠河 やまと・ゆうが
宝塚歌劇団入団後、宙組トップスターとして活躍。卒業後はNYのリンカーンセンターにてブロードウェイミュージカル『CHICAGO』の主演ロキシー役等、数々の舞台で主演を務める。ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』【タキシード仮面】役で5年間連続出演‼︎ 宝塚を超越する美学を魅せつけパリ・上海・ヒューストン等海外公演でも熱狂的な大喝采を浴びた。また今年7月にはハンブルク州立歌劇場・東京二期会の共同制作「魔弾の射手」の新演出の中心となる悪魔ザミエル役で大抜擢され国際的オペラデビューを飾った。テレビ出演やドラマ・出版メディア等多方面で多彩な才能を発揮。オペラデビュー以降、現在はミラノを拠点にロンドン、パリ、ドイツ、スイス等ヨーロッパ各地やニューヨークでオペラ等の勉強に取り組んでいる。
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