見下ろしてみたり、見上げてみたり──。螺旋階段の“構造”そのものに惹かれて、撮影をはじめたという稲見隆太郎さん。螺旋階段がつくりだすどことなく無機質でひっそりと潜む「うず」の模様をとても繊細に切り取っています。
吸い込まれそうな魅力が隠れている
螺旋階段マニアの中では有名な「東京文化会館」の螺旋階段。赤の床が強烈なインパクトでありながら、階段の構造部分がわずかに見える。
階段を撮影するときは、小さな図柄探しに時間を忘れる。
上から、下から、2方向からの螺旋階段を比較してみよう。
見る方向が変わるだけで、手すりが生む印象が大きく変わる。
前編で天窓に惹かれたと紹介した木造のこの階段。
本当の役目は周りを見渡す展望台だが、内側を見下ろせば一味違った景色が見える。
探すとたくさんの“形”が隠れている階段。
⃝、⃞、△、見上げたときと、見下ろしたとき、同じ空間とは思えない造形美。
はじめはせんだいメディアテークに行ったときに偶然出合った螺旋階段を撮影したこと。安藤忠雄さんや伊藤豊雄さんの建築を巡るようになって、螺旋階段にさらに魅了されていく。撮影をするときは何度も、上ったり、下りたり。螺旋階段は、人や自然と違って一度建てられたら常にそこにある。当たり前になってしまいがちだが、じっくりと向き合って観賞できるのも、魅力のひとつなのかもしれない。
Photos by Ryutaro Inami
稲見隆太郎
1985年東京生まれ。
10年前より友人の誘いで写真を始め建築写真、ストリートスナップなどを経て現在はフィルムカメラでの生活写真を主に撮影。医療機器メーカーで勤務する傍ら小説の装丁写真などの撮影も行う。