Tempalayがリアルに語る、バンドマンの挫折・夢・お金の価値【後編】

2018.03.19

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Tempalayがリアルに語る、
バンドマンの挫折・夢・お金の価値【後編】

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「売れる」というテーマで行われた、Tempalayによるお酒を飲みながらの会議の後編。前編では、ロックバーでの出会いから、デビュー直後の紆余曲折、そして「月に50万円稼ぐ」という具体的な目標を語ってくれた。では、どうすれば、その目標を達成することができるのか。

「サラリーマンの給料を聞くと、『うわ、すごいなあ』と思うけど、そこに後悔や葛藤はないです」

──ミュージシャン同士で、お金の話はしますか?

小原:冗談めかして「いくらもらってんの?」なんて聞くことはありますけど、あんまり深く話すことはないですね。

──一般的には、年齢が月給の目安だと言われますよね。20代は20万円台、30代は30万円台。同世代の友人たちと比べて思うところはありますか?

小原:どうだろう……。東京にいるのはミュージシャンの友達ばっかりだし、帰省して会う友達も、無職のやつとか普通にいますからね。自分がまともに感じてくる(笑)。

竹内:それはお前の周りだけだろ(笑)。

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左から竹内祐也(Ba)、小原綾斗( Gt & Vo)、藤本夏樹(Dr)

藤本:ぼくは、他人と比べることはないですね。高校を卒業するときに、そういう世界とは決別したというか。サラリーマンの仕事や給料を聞くと、「うわ、すごいなあ」と思いますけど、そこに後悔や葛藤はないです。音楽が好きで、この世界に飛び込んだので。

竹内:最初の頃は、サラリーマンになった同級生のお節介連中に「これからどうするんだ?」とか言われたけど、最近では逆にうらやましがられますね。「応援してるぞ」って。散々ダメなやつ扱いしてきたくせに、今は勝手に夢を託されてる。いい迷惑ですよ(笑)。

──同年代の方からすると、自分の好きなことをやり続けている姿はうらやましく映るでしょうね。ただ一方で、バンドマンがCDを売ってお金を稼ぐというビジネスモデルは崩壊しつつあります。

小原:たしかに、もう何年もCDも売れない時代が続いてますけど、音楽そのものはなくならないと思うんです。それを届ける手段がどんどん変わってきているだけで。CDは廃れていく一方で、今はアナログレコード人気が再燃しつつありますよね。とはいえ、レコードは原価が高くて採算が取りにくいうえに、ダウンロードはインフラが飽和状態。これからどうなっていくのかを、しっかりと考えないといけないと思います。レコード会社はいまだにCDをバンバンつくっているけど……。

竹内:とはいえ、やっぱりCDは出したいよね。「カタチに残したい」っていうのは、おっさんの考え方なのかもしれないけど、そこはこだわっていきたい。

生き残るために大切なのは、「自分たちだけの席」をつくること

──「売れるため」や「音楽で飯を食っていく」ためにどうすればいいか。結局は、いい楽曲をつくって、いいライブをやるというところに行き着くんでしょうか?

小原:それはもちろんですが、大事なのは「自分たちだけの席」をつくることなのかなと。多くのバンドは、すでに誰かがいる席に座ろうとするじゃないですか。たとえばSuchmos(2013年結成の6人組バンド。2016年に『STAY TUNE』がCMソングに起用され一躍脚光を浴びた)がはやれば、彼らと同じようなバンドがたくさん出てくる。それで、Suchmosの椅子の上に、似たような椅子を重ねていく。

そうやって重ねていったら、いつか崩れますよね。それより、自分たちの新しい席をつくるべきなんですよ。そうすれば、たとえ武道館を満員にはできなくても、食べていけるんじゃないかと思います。

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竹内:そういうことを、しっかりと考えられるバンドが勝ち抜く世界になると思う。海外のシーンを見ているとそういった個性をもったアーティストが活躍しているし、メジャーとインディーズの線引きはどんどんなくなってきているように思います。

──そういった戦略的なことも考えながら、曲をつくっているんですか?

竹内:以前は、よく話し合っていました。「ここをターゲットにして、そこに刺さるような歌詞を書こう」とか。でも、3人で話し合っていても、なかなかうまくいかないんですよね(笑)。

小原:プロデューサーのような人をつけて、その人にTempalayを俯瞰的に見てもらってもいいのかもしれないですね。去年、ファッションブランドの「GAP」とコラボしてつくった配信シングル『革命前夜』は、すごく手応えがあったんですよ。「こういうイメージで」みたいな具体的なリクエストがあったことで、「そのフォーマットのなかでいかに表現するか?」という発想になった。自分たちのよさも出しながら、求められていることが具現化できたんじゃないかと思います。

「今は、『一人ひとりが好きなものを探せる時代』だと思う」

──星野源や西野カナの楽曲を聴いて、ヒットの研究もしているそうですね。

小原:研究というと大袈裟ですけど、「どうして売れているのか」を考えながら聴くようにしていますね。売れている人には、ちゃんと理由があると思います。たとえば西野カナさんの歌詞。ネットなんかを見ているとみんな好き勝手書いていますが、それ自体がすごいことなんですよね。みんな反応せずにはいられないわけですから。

──西野カナの『会いたくて 会いたくて』や、RADWIMPSの『前前前世』など、言葉の強烈さに惹かれるともおっしゃっていましたね。

小原:歌詞を聴いて、共感してもらうことがすべてじゃないと思うんですよ。「会いたくて会いたくて震える」っていう歌詞とか、とにかくパンチが効いている。だからこそ、反応する人が多いんだと思います。

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竹内:ただ、研究して研究して、「売れるための法則」を見つけたとして、自分たちがその法則に完全にのっとった音楽を奏でるかというと、それはまた別の話なんですよね。やりたいことをやりながら、結果として「売れる」ためにはどうすればいいのかということで。

今は、ジャンルも表現の方法も、細分化されているじゃないですか。それって「一人ひとりが好きなものを探せる時代」とも言えると思うんです。ぼくは、そんな時代だからこそ、いろんな人たちと会いたいなと思う。音楽に限らず、いろんな分野の最先端の人たちと。アイデアを交換し合って、お互いに補い合っていくことで、GAPのときみたいに、いいコラボができるんじゃないかな。そうやって、自分たちでイマジネーションを広げていくことが重要だと思っています。

Written by Takanori Kuroda
Edited by Kenta Kimura, Reino Aoyagi (CINRA, Inc.)
Photos by Keishi Asayama

MUNSELL Q&A

Q. 好きな色、苦手な色は?
A. 好きな色:エメラルドグリーン 苦手な色:濃い赤(小原綾斗)
エメラルドグリーンはなんともいえない幸福感と、なぜか「食べたい」という欲求を感じます。濃い赤は生々しくて苦手。
Q. もっとも素の自分でいられるのはどんなとき?
A. トイレのなか(小原綾斗)
どんなに愛してる人でもここだけは見られたくない唯一の瞬間なので、ここだけは自分以外の方も含めて絶対に知り得ない領域だと思う。
Q. 自分でも驚いた、自分の意外な一面とは?
A. 『はじめてのおつかい』を見て号泣したこと(小原綾斗)
子どもに感情移入するというよりは、親の顔を見たら泣けてくる。他人の結婚式でも、呼吸困難になるくらい泣いちゃいます。
Q. 今一番行ってみたい場所は?
A. 女風呂(小原綾斗)
いくら大金持ちになって権力をもったとて、きっと死んでも女風呂には絶対に入れないので。
Q. 生まれ変わったらなにになりたい?
A. 女(小原綾斗)
女子会したい。
profile

Tempalay

http://tempalay.com

東京を中心に活動する、小原綾斗(オハラ・リョート / Gt & Vo)、竹内祐也(タケウチ・ユウヤ / Ba)、藤本夏樹(フジモト・ナツキ / Dr)による3ピースロックバンド。ライブはサポートメンバーにAAAMYYY(エイミー / Cho & Syn)を加えた四人編成で行う。『FUJI ROCK FESTIVAL ’15&17』に出演。2015年9月にリリースした限定デビューEP『Instant Hawaii』は瞬く間に完売。2016年1月に1stアルバム『from JAPAN』をリリースし、『SXSW2016』出演を含む全米ツアーを開催。2017年は、2月にEP『5曲』を、8月に2ndアルバム『from JAPAN 2』をリリース。

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