わずかな例外を除き、まったく同じDNAを持つとされている双子(一卵性双生児)。そっくりな見た目だけでなく、同じ時代や環境で育った二人によるシンクロした行動を見て、本当にテレパシーがあるのでは? と疑ったことのある人もいるのではないだろうか。
「えまえり」の愛称で人気を集める双子モデル、谷奥えまさんと谷奥えりさんは、同じ環境で育ち、同じ仕事をし、私生活でもいつも一緒だという。もしこの二人が同じ映画や絵本を見たら、それぞれどんな感想を抱くのか。
そこで二人に同じ映画や絵本を見てもらい、それぞれの考え方の違いに迫るインタビューを実施。前編のお題は、2016年に大ヒットした映画『ラ・ラ・ランド』。夢を追う男女の主人公の、さまざまな選択が描かれたこの作品を見て、二人はどんな感想を持ったのか。じっくりと語り合ってもらいました。
『ラ・ラ・ランド』
- 発売元:ギャガ
- 販売元:ポニーキャニオン
- DVD 3,800円(税別) Blu-ray 4,700円(税別)
- デジタル配信中
- © 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
【あらすじ】 夢を追いかける人々が集まる街・ロサンゼルスで出会った、売れないジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と、女優志望のミア(エマ・ストーン)。やがて二人は恋に落ち、互いの夢を応援しあう。しかし、ジャズバーを開くという夢を持つセバスチャンが、資金づくりのために加入したポップバンドが成功したことから、二人の思いはすれ違いはじめ……。
「双子といっても普通の姉妹と一緒なんじゃないかな。テレパシーもないですし」
──幼いころから一緒に育ち、今は双子モデルとして一緒にお仕事をされている二人ですが、考え方や性格も似ている部分が多いんですか?
えり:仕事でも私生活でも、辛いことも楽しいこともいつも一緒だから、そのときに考えていることは似ている部分も多いかもしれないですね。でも、性格は全然違います(笑)。
えま:えりは感情をすぐに表に出すから、こうやって二人でインタビューを受けるときは、いつもえりが先に喋ってくれる。私はゆっくり話すし、少し人見知りなんです。一人でこういうインタビュー受けたら、絶対上手に喋れないと思う(笑)。
えり:えまのほうが慎重かもしれないですね。私がバーっと喋ったあとに、「あの言い方はあかん」「礼儀がなってない」とビシッと言われて反省することもあります。無意識に、お互いがバランスを取ってるのかもしれない。
──生まれてからずっと一緒にいるうちに、少しずつ役割分担が発生して、次第に性格も変わっていった?
えり:そうだと思います。だからこそ、ずっと一緒にいられるのかもしれないですね。まったく一緒だったら疲れちゃいそう(笑)。小さい喧嘩はしょっちゅうしますけど。
えま:お互いに謝ったこと、一度もないしね(笑)。
えり:喧嘩して10分後には、普通の会話をしてる。
えま:私たちが喧嘩すると、周りが笑いはじめるんですよ。「また、はじまった」って感じで。
──そっくりな二人が言い合う姿がおもしろいのかもしれないですね(笑)。双子は行動も性格も考え方も似てしまうという印象があったので、そういった違いがあるというのは意外でした。
えり:うーん……実際は、双子といっても普通の姉妹と一緒なんじゃないかな。よく「双子ってどんな感じなんですか?」って聞かれるんですけど、本当に普通なんですよ。よく言われるような、テレパシーもないですし(笑)。
えま:偶然、一緒のものを買ってるとかはあるけどね。でも、それも歳が近い姉妹だったら普通にあることだと思う。
──好きな色とか趣味も違うんですか?
えり:そうですね。Instagramを見るとよくわかるんですけど、全然違うと思う。
えま:とくに、服の好みは違うよね。えりのInstagramはモノクロな色合いが多いけど、私はガーリーでカラフルなものが好き。内面だけじゃなくて、そういうわかりやすい違いもあります。
「夢を追い求めて生きるミアの葛藤は、自分たちの思いと通じる部分があった」
──そんなお二人ですが、映画『ラ・ラ・ランド』を見て、率直にどんな感想を持ちましたか?
えま・えり:(二人揃って)めっちゃ共感した!
──そこは一緒なんですね(笑)。具体的には、どのあたりに共感したんですか?
えり:女優になるという夢を追い求めて生きるミアの葛藤は、自分たちが普段感じている気持ちにも通じる部分があったなって。
えま:ミアがオーディションに落ち続けて自信をなくすシーンとか、私たちも同じような経験があるので感情移入してしまって。「ほんまに、辛いよなぁ」って声に出しながら見ていましたね。
──互いに惹かれ合いながら、それぞれの夢を追い続けるミアとセバスチャンを描いたこの映画。結末は、ハッピーエンドかどうか意見が分かれる部分だと思います。お二人は、どう捉えました?
えり:映画のストーリーだけを見たら、少しだけ「なんでなん!」って感じた部分はありましたね(笑)。
えま:もし、自分がミアと同じ境遇だったら、同じ選択をするだろうなと思ったので、私はすっきりしました。最終的にお互いの夢を応援し合って、セバスチャンもミアも、自分の叶えたい夢を叶えることができた。自分的にはハッピーエンドになったなと思っています。
えり:たしかに、もし自分に置き換えたらミアと同じ選択をするだろうな、とは思った。
えま:映画のなかでは描かれていなかったですけど、きっと、セバスチャンも夢を叶えていくミアを見て、触発された部分があったと思うんですよ。自分を見つめ直して、自分のやりたいことを再確認できたのだと思う。はじめから、そういう選択をする二人だからこそ、惹かれ合ったんじゃないかな。
「一度きりの人生、やりたいことをやるという思いはぶれない」
──自分たちが恋愛と仕事、夢と現実の岐路に立ったとき、主役の二人と同じような選択をする?
えり:そうですね。映画の中盤、セバスチャンが自分の信念を曲げて、売れるためのバンド活動をやっているときに、二人が喧嘩をしましたよね。私も大切な人が自分のやりたいことをやらずに、安定を選んでいたとしたら、苛立ちをぶつけるだろうなって思いますね。
えま:一度きりの人生、悔いのない生き方をしたいので、「やりたいことをやる」という思いはぶれないと思います。そして、私もそれをパートナーに伝えると思うな。芯は曲げたくないので。
えり:私たちは高校を卒業してすぐに、今の事務所に入るために京都から東京にやってきたんです。最初は右も左もわからなかったので、「有名になるには、こういう仕事をやったほうがいい」っていう大人のアドバイスに流されてしまった時期がありました。でも、それだけだと自分たちのなかにモヤモヤが残る。
だから、本当にやりたいことかどうかを自分たちの胸に聞いて、できる限り意見を言うようにしたんです。そこから、いろんなことが楽になった。その経験も影響していると思いますね。
えま:そういう意味では、納得できないままバンドに参加したセバスチャンの葛藤も、すごくよくわかるんです。
──『ラ・ラ・ランド』の感想がまったく一緒なのは、お二人と主人公の境遇が似ているからなのかもしれませんね。
えり:そうですね。私たちはミアやセバスチャンのように、夢を全部叶えたわけではないけど、夢に向かって努力する二人の姿は、すごく印象的でした。
えま:就活をしている同世代の友達を見て、少し焦りを感じていた時期だったこともある気がします。もっともっと、私たちも頑張らなくちゃいけないね。
まったく違った性格でありながら、夢への思いから『ラ・ラ・ランド』に対して一緒の感想を抱いたえまえり。後編では、名作絵本として知られる『100万回生きたねこ』を読んでいただきます。
Written by Hiroyoshi Tomite
Edited by Kenta Kimura, Reino Aoyagi (CINRA, Inc.)
Photos by Nozomu Toyoshima
谷奥えま、谷奥えり
https://asobisystem.com/talent/taniokuema/
https://asobisystem.com/talent/taniokueri/
「えまえり」の愛称で親しまれる双⼦の女優・タレント。京都府出身。女優としてテレビドラマや映画の主演、CMなどに出演。また、国内外問わず原宿⽂化をPRし、街の活性化に従事する「原宿観光⼤使」も務め、幅広く活躍中。