格ゲー界のニューヒロインとして注目を集めるはつめさん。女性プロゲーマーという厳しい世界で、荒波にもまれながらも、ひたむきに強さを求める彼女の等身大の姿を追いました。
強くなるには練習しかない
地道な努力を怠らない姿はアスリートそのもの
──具体的にはどのようなお仕事をされているのですか?
大会に出て結果を出すというのが一番ですが、それ以外では大会配信のMCをしたり、こうして取材していただくことが多いです。あとはYouTubeで自分のチャンネルを持っているので、定期的に配信するようにしています。それ以外の時間は、ひたすら練習!
──YouTubeではどんなことを配信しているのですか?
YouTubeでは主に大会に行ったときの会場の様子や、昔からやっているFPSの実況をあげたりしています。格ゲーってFPSと違って実況配信するのが難しいんですよ。映像やシーンが変わるわけじゃないし、実況してもそんなにおもしろくないので…。
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──1日のスケジュールを教えてください。
MCなどのお仕事がない日は、ひたすら部屋にこもってゲームをしています(笑)。プロになってからは完全に夜型なので、14時頃に起きてまずはトレーニングモードで練習。苦手なキャラをCPUにやらせてひたすら戦ったり、やりたい技を何度も練習して磨きをかけたりしています。夕方になるとオンラインに人が集まってくるので、オンラインゲームで対戦練習をしています。
あとは、週に1度くらい秋葉原や中野の対戦会場に行って、オフラインで練習することも。本当に寝る時間とご飯を食べる時間以外は、ずっとPCの前にいるっていう生活ですね。夢中になるとご飯を食べる時間すら惜しいので、そんなときはゲームをしながらCOMPを飲んでいます(笑)。
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──上達するコツは何だと思いますか?
とにかく練習するしかないと思います。練習は絶対に自分を裏切りません! 2〜3日でも練習をさぼったりすると感覚が鈍ってしまうので、忙しくて時間がないときでも、最低1〜2時間はゲームに触れるようにしています。
一番いいのは、頭で考えるよりも先に、指が勝手に動くようになることなので、別のYouTube動画を見つつゲームをしてみたり。何も考えずに指が動いているという状態まで極めることが大切なんです。こういう練習を続けていると、指に技が染み込んで、意識しなくても指が勝手に動くようになるんです。
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2022年からアジア競技大会の正式種目入り
e-sportsバブルの波がじわじわ到来
──e-sportsが注目を集めていますが、そうした実感はありますか?
これまで職業を聞かれてプロゲーマーと答えると、ただのニートと思われてしまったりすることもあったのですが、アジア競技大会の新種目に決まったこともあり、少しずつ認知されてきていると思います。テレビに出させていただいたり、こうして取材をしていただくことも増えました。
アイドルや女性タレントさんでゲーム好きを公表されている方も増えたことも、e-sportsの認知度が広がってきた理由のひとつだと思います。こうした影響もあって、最近では女性プレーヤーも少しずつ増えてきました。とはいえ、日本は世界に比べてe-sportsの競技人口が少なく認知度も低いので、これからもっとe-sports業界は盛り上がっていくべきですね。
──世界のe-sportsの評価は日本と比べて違いはありますか?
まず盛り上がりが全然違います! 例えば韓国だと、サッカーなどのメジャーなスポーツと同じような認識で、大会に行くと観客がたくさん! プロゲーマーが将来なりたい職業ランキングの上位に入っていたりして、有名なプロゲーマーは芸能人並みの人気があるんです。賞金も海外の大会は何十億円というレベルですが、日本はまだまだです。
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──e-sportsブームの到来で期待することはありますか?
日本のe-sportsの世界っていまだ男性社会なんです。国内の大会に行くと分かるんですけど、300人の大会があるとしたら、女性の割合は1〜2人くらい。だから、やっぱり少数派ゆえのバッシングみたいなものがどうしてもあって。私自身、これまで女だから若いからということで、根拠のない中傷を受けたことが何度もありました。そういう世界なので、せっかく強くてもプロになるのを躊躇してしまう女性が大勢いると思うんです。だから、e-sportsがこれからもっと盛り上がることで、女性プレーヤーに対する偏見が減り女性がプロになりやすい環境が整えばいいなと思います。
──プロゲーマーになってよかったことはありますか?
最近は韓国、アメリカ、シンガポールなど、海外の大会にたくさん出場させてもらっているので、そこで外国の方と交流を持てるのが楽しいですね。この仕事をしてなかったら絶対に出会えなかった人たちと出会うことができて、言葉は通じなくても、同じゲームを通じてコミュニケーションをとれるのがうれしい! ゲームの素晴らしいところだなと思います。そして何よりも、好きなことを仕事にできているというのが一番です。
──今後の抱負を教えてください。
今はとにかくたくさん練習して、もっと強くなりたいなと思います。国内外の大会にもたくさん出場して結果を残したいです! そうして女性プロゲーマーである自分が活躍することで、プロを目指す女性プレーヤーが増えてくれたらうれしいです。また、イベントMCなどの仕事も積極的に行って、日本のe-sportsの普及に貢献していきたいと思います。
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Written by Mai Ueno
Photo by Kenji Nakata
はつめ
ストリートファイターⅤのキャミィ使い。2016年株式会社コンプとスポンサー契約を結び、格闘ゲームでは日本で3人目のプロゲーマーとなる。2018年7月、プロゲーミングチーム「父ノ背中」に加入。YouTube配信をはじめ、オンラインゲームの配信やユーザー主催の大会配信MCを務めるなど、多岐にわたって活躍中。