「MUNSELL」のコンセプトムービーにもご出演いただき、音楽を手がけてもらった有島コレスケさん。
複数のバンドに異なる楽器担当として所属し、映画の劇伴(劇中音楽)や舞台音楽にも挑むなど、多面的に活躍する彼の創作にかける想いに迫る。
一度引き受けた仕事に“照れ”は必要ない
──現在の活動内容を教えてください。
どう答えるのが正解なのか、いつも困るんですよね(笑)。今は一人でやっているバンドの〈arko lemming〉を含め、高校生の頃から組んでいる〈told〉や〈スズメーズ〉、それと志磨遼平くんと一緒にやっている〈ドレスコーズ〉など、おそらく6つのバンドを掛け持ちしながら活動しています。
──おそらく(笑)。バンドによって担当する楽器もギター、ベース、ドラムなど幅広いですが、どういった経緯で今の活動形態に至ったんですか?
中学高校の頃って、どこの学校にもバンドを掛け持ちしている子がいたじゃないですか? 僕の中では、そんな軽音楽部時代のノリと変わらないんですよね。自分から意識的に増やしたというより、周りからのお誘いに応えているうちに自然と増えていきました。
──バンド活動以外にも、映画の劇伴なども手がけられています。何か仕事を受ける上で基準はありますか?
いや、お断りすることはほとんどないです。もともと映画は大好きなので、『なけもしないくせに』(2016年/監督・井上真行)の劇伴は喜んでやらせていただきましたし、7年前ぐらいから週1で高円寺の古着屋「即興」にも立たせてもらったりもしました。基本お願いされたものには応えたいと思っています。
今はドレスコーズとして舞台『三文オペラ』の音楽にも挑戦しています。志磨くんが音楽監督で、僕は楽団の一人として毎公演生演奏を行っているんですけど、目の前で俳優さんたちが役を作り上げていく過程に立ち会うことができるのは、非常に刺激的です。
──幅広く活動する上で、メリットやデメリットを感じることはありますか?
苦に思ったことは一度もないです。むしろ、こっちでやったフレーズを別のバンドに活かしたりとか、相乗効果の方が大きい気がします。あと、僕はまとまった休みがあると必ず体調を崩すんですよ(笑)三連休とか。だから、予定を入れてくれる皆様のおかげで生かされているという感覚です。
──昨年、活動を終了した〈0.8秒と衝撃。〉では、当初経験のなかったドラムで加入されました。未知の分野に挑戦する上で、気後れすることはないんでしょうか?
常に「僕なんかでよければ……」という気持ちではありますけど、引き受けた以上は精一杯頑張ります。たとえば、中にはモデルのお仕事を依頼してくださる方もいるんですけど、頼んでくれる人たちは僕を世に出そうと思っているわけじゃなく「ブランドの魅力を広く伝える」という同じ目標のもとに僕がいるだけです。なので、そこで変に僕が照れることでクオリティが下がってしまうのだけは避けなければいけないと思っています。
複数の仕事を行う「複業」という言葉が注目される昨今、有島さんはそんな現代のロールモデルともいえる存在。未知の分野に挑戦するとき、「周りに何か言われるかも」と不安に思う人も多いかもしれないが、彼の話を聞いていると、クオリティを高めることに集中すればそんな感情はわいてこないのだと思わせられる。次回は、意外な原体験から有島さんのルーツを探る。
Written by Yosuke Noji
Edited by Kentaro Okumura
有島コレスケ
“一人バンド“である arko lemming として活動。作曲、作詞、編曲、ドラム、ベース、ギター、パーカッション、キーボード、ヴォーカル、コーラスの全てを一人で演奏し、2015年に1stアルバム「PLANKTON」、2017年に2枚組の2ndアルバム「S P A C E」をリリース。個人としても、所属するバンドtoldではベース、0.8秒と衝撃。ライブメンバーとしてドラム、ドレスコーズではアルバムやツアーにおいてベース、コーラスを担当、2017年のツアーではギタリストとして帯同。RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2017において即興演奏イベント“ROUND ROBIN”に出演、と縦横無尽に活動中。最近はギターとルーパーを使い一人で多様な音を重ねていき曲を演奏する即興性の高いライブを展開。曽祖父は白樺派の文豪、有島武郎。祖父は黒澤明監督『羅生門』で知られる名優、森雅之。